曲書緩想文

もともと音楽の話ばっかりしてました。今はよくわかりません。

エモ・ピエロの挑戦状(グッドモーニングアメリカ@所沢航空公園tieemo festival 2013,11/09)

午前11時30分、所沢航空公園で、tieemoフェスティバルの幕があがった

 

はずなのだが、

 

しかしステージには誰もいない。

ベンチに腰掛けた客が不思議そうにしている一方で、ステージ前に詰めているグッドモーニングアメリカのファンたちは「何か」に気づいた様子でにやりとしているように見える*1

 

と、スピーカーから大音量でベーシストたなしんの絶叫が響き渡る。

「みなさーーーーーーん!! おはようございまーーーーーす!!! いやー、エモい天気(曇り空)ですねーーーー!!」

 

姿が見えないまま、たなしんの声だけがハイテンションに語る。

「わたくし、高校二年のときに初めて彼女ができまして、もう三か月間ラブラブに過ごしていたんですが、突然連絡が取れなくなってしまったんですよ! そのときに! 今日のトリのゲットアップキッズの! 二枚目のアルバムをずっと聴いて癒されていました!! そんな不思議な縁に感謝して*2、今日はそのゲットアップキッズの曲を歌いながら登場したいと思います!!」

 

ステージ前に現れたのは、ハリボテのロボットの着ぐるみ。The Get Up Kidsの2ndアルバム"Something to Write Home About"のジャケットに描かれていたものを模したものだと思われる。ただし、下半身はむき出しの生足である。

Something to Write Home About: 10th Anniversary Ed

Something to Write Home About: 10th Anniversary Ed

 

 

ハリボテのロボットは手拍子を求めつつ、客席を一周しながらTGUKの"Holiday"のサビを熱唱。

歌い終わると、いつの間にかステージにいたたなしん以外のメンバーが演奏を始める。それを合図にロボットの中からホットパンツ一丁のたなしんが飛び出し、ステージに駆け上がる。イントロセッションの後、”キャッチアンドリリース”で本編開始。

 

 

tieemoフェスは航空公園の広い敷地のほんの一隅を使用しており、会場を一歩出れば、ごく普通の土曜日の公園の風景が広がる(だから外にいても音がまる聞こえなのだが)。もちろんステージ前には彼らの熱心なファンが詰めているが、大半はTGUKを第一目当てにした客か、あるいは場所柄、家族連れの姿もある。

トップバッターである彼らのステージ次第で、フェス全体の盛り上がりに少なからぬ影響が現れる、そんな感じがしていた。

 

それでも、いや、だからこそ、グッドモーニングアメリカ(特にたなしん)は「いつものファン」との内輪ノリで盛り上がることをできるだけ避け、会場全体に語りかけていた。

 

気温15度の中にパンツ一丁の金髪の男が、

スカさず気取らず、引かれても滑っても、フェスを盛り上げようとしている。

 

たとえとしては適切でないかもしれないが、ヒーローショーやサンリオカーニバルの類のように、「会場のみなさん、エモですよ!」と声をかけることを重視するその姿勢に、グッドモーニングアメリカを知らない人々も笑い、手拍子し、惜しみない拍手を送っていた。

 

The Get Up Kidsという自分のあこがれのヒーローが万全の状態で迎えられるように、トップバッターとして道化になるという覚悟。最高にクールでエモなピエロだったのではないか。

 

*1:グッドモーニングアメリカのライブはだいたい「たなしんがステージ外のどこからともなく現れる」という始まりが定番のようだ

*2:省略するが、その彼女は後に同じバンドのメンバーと付き合い出したようで、そのメンバーが住んでいたのが所沢航空公園だという