曲書緩想文

もともと音楽の話ばっかりしてました。今はよくわかりません。

ただ、格好良いだけで。(ANTEMASQUE @梅田CLUB QUATTRO 2015, 02/16)

「2013年の頭に解散したThe Mars Volta(以下TMV)のOmar Rodríguez-LópezとCedric Bixler-Zavalaが三たびバンドを組んだ」

という話を知ったとき、最初に浮かんだ感情は、驚きだった。

次に浮かんだのは、喜びだった。

その一瞬後に浮かんだのは、大きな不安だった。

 

「2012年の再来になりはしないか」と。

 

2012年、TMVの6枚目のアルバム"Noctourniquet"リリースとほぼ時を同じくして、OmarとCedricは前身バンドAt the Drive-In(以下ATDI)を再結成。11年ぶりの「伝説のバンド」の復活に、世界中のファンが歓喜した。

僕も高校生のとき"Relationship of Command"に撃ち抜かれてATDIに嵌り、見たいと思っているうちに解散してしまったこのバンドが観れると思うと、さすがにテンションが上がった。

 

Relationship of Command

Relationship of Command

 

 その気持ちのままアラサーになり、動画サイトにある往年のATDIのステージを見ては「うひゃー」とか言っていた。

 

が。

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オンガクハ コッキョーヲ コエル(Adebisi Shank @新代田FEVER 2014,12/19)

この日、西の小さな国から飛んできた流れ星が、遥か東の小さな国の、東京の、世田谷の、薄暗い地下室で輝いた。

星の起点は、アイルランド。名は、Adebisi Shank

9月に解散をアナウンスし、本国ではすでにラストツアーを終えていたが、日本の盟友LITEに誘われ、最後の最後に来日することになっていた。

 

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開拓者たちへ(FRONTIER BACKYARD @新木場STUDIO COAST 2014,12/14)

ちょうど2年前の12月、新木場コースト。長く活動休止状態にあった「AIR JAM世代」を象徴するバンドのひとつ、SCAFULL KINGがデビュー15周年を記念して、ワンマンライブを行った。

確か僕はその日用事で30分ほど遅刻し、開演時刻からだいぶ経って会場に着いた。フロアは超満員の大盛り上がりで荷物も多かった僕は近づくことを断念、二階で立ち見することにした。

そこから見た光景――フロアも、2階も、ステージも、会場のひとりひとりから伝わる楽しさやワクワクが、あんなに伝わってきたライブはここ数年でなかった。

 

そんなワクワクの渦の中心にいたのが、

田上修太郎(TGMX)、増渕謙司、福田忠章(TDC)。

 

そういえば田上があのとき「FRONTIER BACKYARD(以下FBY)も再来年には10年なんだよね」と言っていたのを覚えている。
「またその時には何かしらやりたいと思いますんで、よろしくお願いします!」と言っていたことも。
 

それから2年。はたして彼らはもうひとつの節目を迎える。

"10 surroundings"と銘打たれたそれはワンマンではなく、フェス形式で。

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不気味の谷の向こう側に見えたのは(hide "子 ギャル")

「もちろん彼が今、生きていたら、どんな音楽を作っていたかはわからないんですよ。だけどその答えというのは、それぞれの受け手の心のなかにあればいいんじゃないかと思う。だからもう、単純に楽しんで欲しいんです」

 (I.N.A : "子 ギャル"ライナーノーツより)

 

 

hideの「最後の新曲」と銘打たれた"子 ギャル"がリリースされた。


奇跡の新曲リリース!hide生誕50周年アルバム「子 ギャル」特設サイト

以下、この曲の概要を引っ張ると、

1998年、hideのソロアルバム"Ja,zoo"制作のために作られた曲のなかに、この曲の原型があった。

メロディは出来ている、歌詞も出来ている、ただhideの歌が録音される前に本人が不慮の死を遂げてしまった。そのため、"Ja,zoo"にも収録されず、お蔵入りとなった曲だ。

ただ、hideの他界後に行われたツアーでは、ベースのCHIROLYNがボーカルをとる形で披露されている。


hide 未発表曲 "コギャル" - YouTube

 

この「幻の曲」が、ヤマハVOCALOID技術を使い、生前のhideの歌声を切り貼りしてボーカル・トラックを吹き込まれ完成した。

その技術の結晶を指して、「奇跡の新曲」とふれこまれている。

  

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脱力と情熱のあいだ(HINTO @渋谷CUTUP STUDIO 2014,08/12)

TOWER RECORDS渋谷店といえば、地上8階、地下1階建ての言わずとしれた国内最大規模の店舗だ。

「デカすぎて目当ての売り場に行くのが面倒」「マニアックなものは何だかんだで置いてなかったりする」等々の批判はあれど、あの広さはいつ行っても心躍る。

 

さて、その地下1階には"CUTUP STUDIO"と名付けられたイベントスペースがある。HINTOの2ndアルバム"NERVOUS PARTY"のタワレコ購入者限定ライブのため、僕はそこを訪れた。

 

NERVOUS PARTY

NERVOUS PARTY

 

 

前回ここに来たのは確か2011年の暮れ(当時は「STAGE ONE」という名前だった)、the band apartのライブDVD購入特典ミニライブだった。あのときは会場にパイプイスが並べられ、ステージも簡素。内容も30分そこらの弾き語り&トークライブだった。「だった」というか、それ以外にやりようがない。

それでも、わざわざワンフロアぶんイベント用のスペースがあるだけでもさすが渋谷店*1といった印象だし、インストアライブのクオリティというのはどうやっても「そういうもの」になるんだと思っていた。別に不満はない。

 

だから今回も「まあCD購入特典だしな…」と、軽く弾き語り的なものを想像していたのだが、その予想は見事に裏切られる。

良い意味で。

*1:その時のバンアパの語りで、「札幌ではエスカレーターの下でライブをして周りの目が凄かった」と言っていたのをよく覚えている。

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陰に 日向に B-SIDE(荒井岳史 "beside" & @新宿TOWER RECORD 2014,07/16)

beside  [bisáid]

[前置詞]
1 …のそばに,…のとなりに,の近くに,…と並んで
2 …と比べると(compared with)
3 …をはずれて

[副詞]
1 そばに,並んで.
2 (まれ)さらに,おまけに.

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/ej3/8007/m0u/beside/

 

the band apart(以下バンアパ)のフロントマン荒井岳史が、初のフルアルバム"beside"をリリースした。

 

beside

beside

 

 

また、このリリース日に、TOWER RECORD新宿店の7階イベントスペースにて、発売記念ミニライブ(+α)が行われた。
その様子を振り返りながら、"beside"を何度か通して聴いた感想をだらだら書こうと思う。

 

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待っとったとよ、新曲(toddle@渋谷TSUTAYA O-nest 2014,07/13)

先日、ヴィレッジヴァンガードの店内をうろうろしていたら、「Fridgeezoo」という冷蔵庫に入れるマスコット的ガジェットが目に入った。

冷蔵庫を開けるとセンサーが光を察知して挨拶するのと、さらに一定時間開けっ放しにすると文句を言い出すという機能をもつ。特に実用性はない。
 
そのFridgeezoo、「Fridgeezoo HOGEN」という日本各地の方言でしゃべるバージョンも出ているのだが、福岡方言のアザラシの声を担当しているのは、福岡県出身 田渕ひさ子である
Fridgeezoo HOGEN アザラシ【方言 福岡】 FGZ-SL-FO

Fridgeezoo HOGEN アザラシ【方言 福岡】 FGZ-SL-FO

 

「おかえりー」「今日も楽しくいきましょー」といった標準的なあいさつから、

「よかくさ、よかくさ」「それ、とっとうと?」といった耳慣れない博多弁までなかなかにバリエーション豊富な挨拶。

そして、冷蔵庫を開けっ放しにすると「あつかー、はよ閉めてー」「溶けてしまうやろがぁ」と怒られる。

 

たまらんばい。

 

かくして以来、「 毎日仕事から帰ると女性声の冷蔵庫と会話する一人暮らしのアラサー男性」という客観的に描写したらこの上なくキモい人間がまたひとり生まれてしまった。

 

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