曲書緩想文

もともと音楽の話ばっかりしてました。今はよくわかりません。

THE KIDS GET UP again【後編】(The Get Up Kids@所沢航空公園 tieemo festival 2013,11/10)

2日目セットリスト

1 Holiday
2 Action & Action
3 Valentine
4 Red Letter Day
5 Out of Reach
6 Ten Minutes
7 The Company Dime
8 My Apology
9 I'm a Loner Dottie, A Rebel
10 Long Goodnight
11 Close To Home
12 I'll Catch You
 
en1 Washington Square Park
en2 Woodson
en3 Last Place You Look
en4 Lowercase West Thomas
en5 Stay Gold, Ponyboy
en6 Shorty
en7 Close to Me
en8 One You Want
en9 Mass Pike
en10 Don't Hate Me

1stアルバム"Four Minutes Mile"のアルバムどおりだった1日目に続き、

2日目は本編で2ndアルバム"Something to Write Home About"の全曲を、アルバムの順番で演奏した。

ライブの様子の前に、今回のようなスタイルのライブについてぼんやりと考えていたことを書きたい。

(ライブのレポートだけに用があるという人は飛ばして下さい)

 

 

今回のような、アルバムの曲順どおりに行われるライブは日本でも海外でもしばしば行われる。

このようなスタイルはオーディエンスにとって「次にどの曲が来るのか!?」というワクワク感はないが、次に来る曲がわかっている分、安心して先に期待ができる。

そして、その期待どおりに曲が始まったとき、「先取りした期待」を回収するように盛り上がることができる。

 

僕らは子どもの頃、何度も読み聞かせられて内容のわかっている絵本を、それでも繰り返し大人たちに読んでもらいたがっていたし、その絵本のクライマックスが来るたびに、それがわかっているにもかかわらず喜んでいた。

その際、読み聞かせる側が少しでも展開にアレンジを加えたりすると、ほとんどの場合子どもはそのサプライズを喜ばず、「そうじゃない」と不満をもらす、という実験があったという話をどこかで聞いた気がする。

それは子どもだけの話ではない。古典的作品のリメイクや小説の映画化・ドラマ化などにおいて、「内容がわかっているから見ない」という原作ファンはあまり多くない。知っているからこそ、期待を込めてそれを見る。

そして、多くの場合、原作ファンから叩かれるのは、「リメイク版の行き過ぎた改変」だ。

オリジナルキャラ・オリジナル脚本・オリジナル結末などの全てが悪というではないが、「制作者サイドの自己満足のために原作をぶち壊した」という感想が出るのは、原作ファンからすれば「原作のとおりにそれが再現されること」の方が多く望まれているということではないだろうか。

 

アルバムの曲順どおり、すなわちセットリストがわかっているライブの場合も、たぶん同じことが言える。

ファンの持つその「アルバムへの愛着と期待」を吸い上げ、それをきっちりと反映させたとき、先の見えないライブでは出すことのできない特別な熱気を生む。

だから、ファンがそのアルバムを知っていればいるほど、「ファンがライブの空気を作り出す」ことができるのだと思う。

 

 

(以下、ライブレポート)

「Ch… Ch…Check, Check, Check…」とMattがステージのまん中、満員のファンの前でマイクチェック。

 

「Check, Check, Alriggggggggggght!!!!」

マイクチェックなのに叫ぶ。昨日よりもすでにハイテンションだ。

観客も歓声をあげて応える。

日は傾いているが、昨日と違って天気は晴れ。気温も高めで気持ちの良い秋の日に、tieemoという祭典もいよいよ最後の大舞台を迎える。

 

午後3時50分、予定時刻よりも少し早くにメンバーがステージに揃ってライブ開始*1

 

1日目が1stアルバムの曲順だったことから、おそらく2日目もアルバムどおりにくるはず。

僕も含め、会場のファンは皆同じことを考えていたと思う。

――ということは、1曲目はもちろん"あの曲"だ。

 

4カウントで全員が一斉に楽器を鳴らす。

2度のピックスクラッチ、4つ打ちから加速するバスドラム

"Holiday"。今なおエモの代名詞として語られる、疾走感と瑞々しさにあふれた名曲で、スタートから初日よりも激しい熱狂が会場を包む。

 

そのまま、昨日のアンコールでも演奏された"Action & Action"。やはりアルバム順のセットリストだ。

見た感じでは初日よりも2日目の方がかなり多くの人が集まっている。

日曜ということと、2ndの人気の高さで2日目を選んだ人が多かったのだろう。

これだけの人が、フェスという舞台でありながら1つのバンドに釘付けになる様子は圧巻だ。

 

 

「カンパーーーーーーイ!!」

日本語で挨拶するJim。オーディエンスに向けて缶ビールを持ち上げる5人。

第一声がこれとは。笑いとともに「カンパーーーーーーイ!!」とファンも返す。

 

ものすごい勢いで入った最初の2曲を、3曲目の"Valentine"で一度落ち着ける。

迫る夕闇に、さっきとはうって変わって静かに体を揺らすファンたち。

と、休んだのも束の間、4曲目"Red Letter Day"で再び暴れ、拳を突き上げる。

 

5曲目の"Out of Reach"では歌い始めにMattが

「Sing along!!」とオーディエンスを促す。

前列も後列も、会場中で大合唱が起きた。

(この日のtieemo公式Twitterより)

 

6曲目"Ten Minutes" が終わった時点でチューニング。

Jimが「今のでサイドAは終わりだ。さあレコードを裏返さなきゃな」とアナログ盤をひっくり返す仕草をする。

これも「アルバム再現型ライブ」ならでは。


サイドBこと第二部は、"The Company Dime "から"My Apology"で落ち着きを取り戻しては"I'm A Loner Dottie, A Rebel"で再び勢いづく。

まるでジェットコースターのようにライブ映えするセットリスト。

つくづく、この"Something to Write Home About"というアルバムの完成度の高さに驚く。


5時に近づき、辺りが暗くなるにつれ、照明による演出が存在感を増してゆく。

"Long Goodnight"の後半、ほぼ完全に静止するまで落ち込んだ曲調が少しずつ盛り上がっていく部分で、曲に合わせてライトアップ。

計算か、偶然か。単純な仕掛けでここまで幻想的な空気を生み出すことができるのか。

バンドとスタッフ、そしてtieemoのスタッフの腕に感嘆せずにいられない。


ライブは"Close To Home"で最後の盛り上がりを見せ、締めの"I'll Catch You"。

同じバラードナンバーながら、"Out Of Reach"とは違い、声を上げて合唱するオーディエンスはいない。アルバムの終わりを見守るように、皆、ただただ黙ってMattの歌に耳を傾ける。


2ndアルバムの全曲が終わり、残響が鳴り続ける中、メンバーはステージを後にする。

万感の歓声と拍手、そして、アンコールの手拍子。


昨日よりもやや間が空いて数分後、アンコールのため五人が再登場した。


「A Toast!! To JAPAN!!!」

二度目の乾杯。今度は英語で音頭をとる。


予定どおりのセットリストは消化した。

後は、何が来るのかわからない期待と緊張の時間だ。


始まったのは昨日の1stアルバムから"Washington Square Park"。

そして、TGUK最初の曲"Woodson"。


Woodsonを演奏するのはある程度の予想がついていた。が、すでに時刻は5時。音出し許可の刻限に達しようとしていた。


「どこまでできるのか?」

そんな逡巡を吹き払うように、ノンストップで1stアルバムの曲を立て続けに演奏する。


まだやるのか!?と驚いていると、さらに"Close to Me", "One You Want"と昨日のアンコールでも挙げた曲もどんどん続ける。

完全に本編より曲のインターバルが短く、限界まで追い込むように盛り上げる。


日本最後のステージで、全てを出し切るつもりか。

会場全体が、「もうどうにでもなれ」と言わんばかりに踊り、跳ね、歌う。


アンコールですでに8曲(!)が終わったところで、少しのMCを挟む(何と言ったかは聞き取れなかった)。流石に、もうこの祭りの終わりが来たことを、ファンたちも感じ取った。

Jamesが"Mass Pike"のイントロを奏でると、会場はまたシンガロング。感極まり涙するファンの姿も*2

今度こそ終わり、と思ったところにとどめの"Don't Hate Me"。最後は上がり切って終わるコースだった。


「SEE YOU SOMETIME AGAIN!!!」


またいつか、さらに大きくなって戻ってくる日を待ちながら、The Get Up Kidsと日本のファンたちは別れの言葉を交わす。


魔法が解けたように真っ暗になった所沢航空公園の中で我に返る。

けれども、永遠のキッズたちは、何度でも立ち上がる。僕もそう信じて待つことにしたい。



そういえば、

後でTwitterに予定されていたセットリストが画像で流れて来たのだが、なんともともとアンコールは3曲の予定だったようだ。

大盤振る舞いの10曲アンコール。よくよく考えると本当にとんでもないフェスだった。

*1:その前のthe band apartの時点で予定よりも巻いて進行されていた。

*2:"Mass Pike"は初日の時点でMC中に大声でリクエストするファンがちらほらいたが、初日は演らなかった。それだけ待ち望まれていた曲だったのだろう。